全世代型社会保障制度の実現に向けた提言
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 新型コロナウイルスのパンデミックは、⽇本の社会保障システムが直⾯する数々の課題に光を当てることとなった。⼈⼝の⾼齢化が加速度的に進み、我々の医療や退職後の⽣活のための⼈的・物的資源は不⼗分な状態にある。その上、停滞する経済の中で今回の危機に対する巨額の財政出動が求められているにもかかわらず、財源の多くを国債に頼っているために思い切った歳出に踏み切れないでいる。また、⽇本の社会保障制度の⼤部分は、戦後、主に感染症や急性疾患の治療を想定して整備され、その後、慢性疾患治療や⼈⼝の⾼齢化に対応するための体制に変容してきているが、そうした根本的な変容を⽀えるために必要な財源について、議論が尽くされてきたとは⾔えない。 ⼀⽅、データ社会が進展し、市⺠社会の積極的な協⼒も得ながらリアルタイムで新型コロナウイルスの影響を把握する動きが⾒られるのは、今後の⽇本社会にとっても⼀つの光明と考えられる。しかし、その基盤整備は諸外国と⽐較して決して⼗分とは⾔えず、例えば住⺠⼀⼈当たり⼀律10万円の給付実態などを⾒ても、ニーズに即したデータの統合や活⽤には改善の余地が⼤いにあることが明らかとなった。 パンデミック時のソーシャル・ディスタンシング政策をめぐっては、⼆つの対照的な考え⽅が存在している。⼀つは、国家に強⼤な権限を持たせ、⼀⼈ひとりの社会的経済的活動を監視するもの、もう⼀つは、国家は積極的に情報を公開・共有し、市⺠社会が現状や未来をより正確に、深く理解できるようにしながら、市⺠社会の積極的協⼒のもとで進めるものである。緊急避難的な⼀時期の措置はあろうが、中⻑期的には、我々が進むべきは後者しかない。先⼈たちが築き上げてきた世界を継承し、我々が⾃由かつ積極的に⾃らの未来を⾃⼰決定できる社会のためにはそれしかないからである。 これは机上の空論的な話などではなく、我々が実際に直⾯している現実の選択である。新型コロナウイルスは⼈類にとって⼤きな脅威であるが、それ以上に、我々が選択する未来を誤ることこそが、本当の危機だといえる。これを機に、過去の世界には適応していたけれどもこれからの世界には到底通⽤しそうにない前時代的な制度や考え⽅を改め、正しい選択をしていかなければならないのである。序論序論|ページ|01これを機に、過去の世界には適応していたけれどもこれからの世界には到底通⽤しそうにない前時代的な制度や考え⽅を改め、正しい選択をしていかなければならないのである。

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