提⾔2 既存のデータベースやシステムを相互運⽤可能な包括的データプラットフォームに統合し、利⽤可能なデータの有⽤性を⾼めるデータ⾰命を加速させるにあたり、欧⽶や中国の後を追っているだけでは、他国を凌ぐことはできない。⽇本には、ビッグデータ・IoT・⼈⼯知能等のデータ関連市場を発展させる「強⼒な起爆剤」が必要である。財政⾚字が恒常化し、政府債務が累増する中で、第4次産業⾰命に回す予算には限界がある。しかし、データ証券化などのスキームが整備できれば、1,800兆円という⽇本の個⼈⾦融資産のほか、世界のマネーを含めた⾦融のパワーを利⽤し、ビッグデータ・IoT・⼈⼯知能などの成⻑を加速させる起爆剤となり得る。ビッグデータ・IoT・⼈⼯知能等に投資する場合、⼤規模かつ質の⾼いデータの収集・整備には⾼額のコストがかかる。そのため、将来収益が⾒込めるプロジェクトでも、ベンチャーキャピタルなどが躊躇し、データ収集や整備に必要な資⾦が集まらないケースも多い。不動産では「不動産リート」や不動産証券化などの「集団投資スキーム」があるが、それを可能とする法改正が不動産開発の起爆剤となったことは有名である。これと同様に、ビッグデータ・IoT・⼈⼯知能から派⽣する権利についても、「集団投資スキーム」を構築することは可能である。例えば、不動産リートのビッグデータ版に相当するものとして、「BDIT(BigDataInvestmentTrust)」が考えられるが、その実現にあたり、「データ証券化」をデータ産業⾰命の起爆剤とすることも可能である。そうすれば、⽇本は世界に先駆けて、ビッグデータ・IoT・⼈⼯知能から派⽣する権利に対して不特定多数の内外の投資者からマネーを集めることになり、収益の分配も可能な「集団投資スキーム」の法整備を⾏うことにもなる。.ACTION 1 |ページ | 05ヘルスケアにおいては、データのサイロ化は、患者、医療従事者、および医学研究者によるデータアクセスを制限する効果がある。しかしこれは、複数の異なる医療機関で治療を受ける患者にとっては、安全上、⼤きな懸念事項となる。医師が、治療中の患者に係る極めて重要な情報が格納されているデータソースにアクセスできない可能性もあるからである。また、データのサイロ化は、複数のデータソースの相互参照によって導かれるような疾患関連の新たな知⾒を得る上では障害であり、医学研究をも制限してしまう可能性がある。 統合されたデータプラットフォームは、いわば公共財的な基幹インフラと位置付けることができる。したがって、情報利⽤権の具体的な運⽤や考え⽅を検討し、広く社会に導⼊するためにも、当⾯の間は、政府がこうした先駆的な取組みに積極的に関与し、⽀援していく必要がある。また、これらの取組みは新たな産業を創出し、データ産業⾰命の起爆剤としてデータの⺠主化を促進させると考えられ、将来的な投資対象としても期待される。現状の問題点⽬指すべき⽅向性
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