全世代型社会保障制度の実現に向けた提言
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提⾔4 社会的弱者の医療アクセ向上のため、遠隔医療、バチャ診療、ジタセピュティクの役割拡⼤するプログム⽀援する今回のコロナ禍で明らかになったように、⽇本のデジタルヘルスは、世界にかなり後れを取っている。⽇本における電⼦カルテの導⼊は⽐較的早かったが、電⼦カルテの全国的な普及やデータの共有化において完全に後れを取った。オンライン診療やデジタル処⽅箋の普及も同様である。⼀⽅で、国⺠のICTリテラシーは上昇し、総務省の通信利⽤動向調査によれば、60代で75.7%、70代で53.6%、80代以上でも23.4%の⼈がインターネットを利⽤している。これらの年齢層では、2010年から2016年にかけて軒並み利⽤率が上昇しているが、それでも⾼齢者のICTリテラシーは必ずしも⾼くはない。⾼齢者は、新型コロナウイルス感染においてもリスクが⾼く、現に医療や介護を受けている⽐率も⾼い。⾼齢者こそがソーシャルディスタンスをを取らなければならないが、取りにくい⽴場にある⼈たちでもある。5Gの発展により、「超低遅延」を⽣かした遠隔⼿術などの技術が開発される素地ができている。オンライン診療やデジタル処⽅箋の普及については、⾼齢者などICTリテラシーが必ずしも⾼くない⼈にも配慮する必要がある。ただそれは、あくまでも⾼齢者をはじめとする⼈々のリテラシーを向上させる形で⾏われるべきで、ICTがインフラ化した現代においては当然である。例えばエストニアのようなICT先進国でも最初から⾼齢者のICTリテラシーが⾼かったわけではなく、⾏政による研修や家族からのサポートが必要であった。また、病気、障碍、難病等により⽀援を最も必要とする⼈へのオンライン医療の提供も早急に進めるべきであろう。デジタルセラピーの重要性も増している。例えば、禁煙のための治療⽤アプリが厚⽣労働省から薬事承認の内定を受けたのは記憶に新しい。この分野は⽶国で急成⻑しており、⽋点も少ないことから、今後も積極的な承認が望まれる。さらに、遠隔⼿術等の⽇本の⾼い医療技術を、世界標準として普及させていく必要もあるだろう。現状の問題点⽬指すべき⽅向性提⾔3 広範な官⺠パトナシップにより、医薬品や医療機器のエビ強化に必要なタ収集するためのイフ構築し、社会的弱者の利益にもなるよなタ収集推進する ⽇本ではNDB、介護DB、DPCDB、MIDNETなどの匿名データベースのほか、全国がん登録DB、難病DB、⼩慢DBなどの顕名データベースを含め、⼤規模な公的データの蓄積が進⾏中である。しかし、NDBと介護DBの連結を除けば、相互のDBの連結や社会における利活⽤のあり⽅について、必ずしも積極的な議論が展開されているわけではない。これらDBの利活⽤は、医薬品や医療機器等の開発・評価を通じ、特定企業だけでなく社会全体に⼤きな便益をもたらすものと考えられる。しかし、第三者提供の「公益⽬的」に対する現状の考え⽅や運⽤では、提供先は学術研究者等にきわめて限定されている。DBの利活⽤を図るためには、匿名性確保を⼤前提としつつ、収集情報に係るDB管理、情報提供に係る迅速な審査、利⽤者⽀援、成果確認といったタスクに対応する体制構築が必要であるが、⼈員⾯、費⽤⾯ともに拡⼤に向けた環境整備は⼗分ではない。既に⼀部では⺠間ベースのDBも存在し、活⽤されているが、今後のDB活⽤に係る官と⺠の役割分担や連携体制、費⽤負担のあり⽅についての⼗分な協議がなされていない。匿名性確保に最⼤限配慮しつつ、DBから引き出される情報価値の最⼤化を図るために必要なDB間の連結を含め、DBの⼀層の充実を推進する。利⽤の公益性」について官⺠を交えた議論をおこない、より幅広い主体による公益⽬的での利⽤を図るため、第三者提供のルールと枠組みを早期に制度化する。情報の提供に係る迅速な審査、利⽤者⽀援(申請⽀援、データベースの基礎知識や解析時の留意点に関する研修等)が必要である。また、安全な利⽤環境の整備を⾏うために必要な⼈員と財源確保について、官と⺠の役割分担や連携体制、費⽤負担のあり⽅に関する協議を実施する。難病、希少疾患をはじめ、国内だけで⼗分な症例を集めることが困難な場合には、匿名性への配慮をしつつ、広く海外のDBとの連携体制を構築する。医薬品や医療機器に関するデータを蓄積しながら、より厳格な効果の検証と適切な評価を⾏うとともに、ニーズや臨床的便益が低かったり、逆に⾼かったりするテクノロジーを洗い出すための情報基盤を構築する努⼒も⾏う。現状の問題点⽬指すべき⽅向性

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