また、医療費全体を俯瞰した⽴場から医療費⽀出を再評価することに加え、⽇本は患者ケアをより効率的に提供する⽅策を検討すべきである。とりわけ、効率的で適切なケアを提供するかかりつけ医の役割を拡⼤し、より強固なプライマリ・ケア・システムを構築することで、より広い意味で価値に基づく診療の在り⽅についても着⽬していく必要がある。提⾔6 医療費⽀出全体をより俯瞰的に分析・最適化することにより、ヘルスケアイノベーション促進の機会を創出する税や保険料などで賄われる社会保障給付費(医療、介護、年⾦等)は現在120兆円程度だが、内閣府などの推計によると、2040年度には1.5倍の約190兆円に増加する(例:GDP⽐は2018年度で21.5%だが、2040年度には約24%に増加)。年齢階級別⼀⼈当たり国⺠医療費(2014年)をみると、前期⾼齢者(65〜74歳)の⼀⼈当たり医療費55.4万円のうち国が負担する公費は約7.8万円であるが、後期⾼齢者(75歳以上)の⼀⼈当たり医療費90.7万円のうち国が負担する公費は約5倍の年間35.6万円である。⼊院医療では、2003年4⽉から診療群分類包括評価(DPC)が導⼊されているが、定額払いと出来⾼払いの混合で、⽶国の診断群分類(DRG)とは異なっている。DPCの下では、出来⾼払い部分で医療費が膨張する恐れがある。外来診療は出来⾼払い制が中⼼で、包括払い化は進んでおらず、かかりつけ医制度もまだ定着していない。後期⾼齢者医療制度においては、引き続き減少が⾒込まれる現役世代の負担能⼒に配慮し、医療財政の持続可能性を⾼めつつ世代間の負担平準化を図る観点から、2004年の年⾦改⾰で導⼊したマクロ経済スライドを参考として、診療報酬の伸びを緩やかに調整する仕組み(医療版マクロ経済スライド)の導⼊を検討する。その際、後期⾼齢者⽀援⾦の増⼤に伴い現役世代の保険料⽔準が増⼤することのないよう、後期⾼齢者の保険料⽔準を引き上げたり、⾃⼰負担割合を2割以上とする後期⾼齢者の対象者を増やしたりするなどの措置を、その都度意思決定するのではなく、⾃動的に実施できるようにする。診療報酬の包括払い化を、⼊院医療だけでなく外来医療にも拡⼤するべきである。そのためには、レセプトデータやその他エビデンスに基づいた、エビデンスに即した報酬体系にするためにさらなる分析が必要である。外来医療では、かかりつけ医制度を定着させる諸制度の改⾰が必要である。現状の問題点⽬指すべき⽅向性ページ | 10| ACTION 2
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