私たち新時代研究所は、持続可能な社会保障制度の維持を目指し、これまで健診、予防の推進を通じ、増え続ける医療費の適切化のための政策提⾔を行ってまいりましたが、このたびはその活動の一環として子宮頸がんの予防に関するプロジェクトを立ち上げることといたしました。
日本において子宮頸がんは、20~40歳代の若年女性を中⼼として年間、約10,000人が発症し、死亡者数は3,000人に達しています。子宮頸がんはHPVワクチンの接種と検診の実施により予防が可能な疾患です。更には、未接種の感染率も下げる、集団免疫効果を示唆する疫学調査結果も複数報告されており、今や世界各国ではHPVワクチンの高い予防接種率を維持することによって、HPV感染の拡大を抑え、子宮頸がんの発症数を減らすことが、重要な公衆衛生政策となっています。
2019年時点において世界の92か国において定期接種が実施されているHPVワクチンですが、我が国においても平成25年4⽉より定期接種化され、子宮頸がん予防の要として、検診とともに車輪の両輪として国民の健康増進に寄与することが期待されものの、定期接種後に有害事象との報告が相次いだことから、8年以上にわたって国による接種勧奨が控えられた状況にあります。
一方で、一昨年国会では議員連盟が立ち上がり、HPVワクチンの必要性を国民に広く理解してもらい、接種率向上につながることを目途に声明が発出されました。その結果、厚生労働省もHPVワクチンに関するリーフレットを改訂し、自治体に向けて接種対象者等への周知に関する具体的な対応策を示すなどの大きな進展がありました。しかしながら、厚生労働省が積極的勧奨を実施していない現状では接種率の回復は望めず、事実上ワクチンの接種がほとんど実施されていないと⾔わざるをえず、安全性の検証も遅々として進まない状況は、国民の健康機会喪失の危機的状態にあると⾔えます。
このような背景を鑑みたとき、日本において国民をワクチンで救うことができる子宮頸がんから守るための第一歩としては、HPV ワクチンの積極的勧奨、さらには、接種率向上のための取り組みが必要不可欠であると確信いたします。弊研究所としてもワクチンの接種率と検診数の向上を目指し、志を同じくする者がここに集い、科学的根拠に基づく議論を通じて、国民に向けた啓発活動を目的としたプロジェクトを展開いたします。何卒、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。