プレスリリース
INES新薬イノベーション研究会としての現状認識・薬価制度改革の考え方
- 日本の医薬品市場に対する現状認識
(1)個々の医薬品の薬価について(ミクロ的観点)
- 日本においては、イノベーティブ新薬の薬価が米国はもとより欧州よりも低位に算定される状況にあり、結果としてアンメットメディカルニーズの高い新薬が日本で開発されないドラッグロス・ラグが生じている。
- 薬価は経年的に下落しており、2021年から実施された中間年改定によってその下落スピードは加速している。一方、円安や資源価格高騰により物価は上昇が続いているが、現行の薬価改定方式は物価上昇を反映する仕組みを内包していない。
- 毎年薬価改定に加えて、市場拡大再算定が与える影響は大きく、2022年度薬価改定においては薬剤費削減額の約2割がわずか23製品による市場拡大再算定により捻出されており、薬価改定の影響はイノベーティブ新薬群にも及んでいる。
(2)総薬剤費についての認識(マクロ的観点)
- 2016年以降の薬価制度抜本改革により、日本市場は数量成長を薬価引き下げ影響が上回る傾向が強まり、全体としてフラットから縮小トレンドに入っている。
- 今後の見通しについても同様であり、民間調査会社(IQVIA社)の予測によると、主要先進国の中で日本のみが唯一医薬品成長率がGDP成長率を下回るとみられている。
- IQVIA社は2022年上半期の医薬品市場についてはプラス成長を報告しているが、コロナ検査試薬や同治療薬の大幅増による影響が大きく、これらの影響を除けばほぼ横ばいの成長が継続している。
- 令和6年度予算編成に向けて
中間年の薬価改定対象が拡大しつつある中、新薬創出の支援への重点化は喫緊の課題であり、その改善策の手始めとして、例えば、長期収載品等のジェネリックへの移行等をさらに進め、薬剤費はイノベーティブ新薬に手厚く配分するといった方策の検討を提案する。
- INES新薬イノベーション研究会が考える薬価制度改革のアプローチ
もっとも上記2の改善策だけでは冒頭に示した課題を根本的に解決することは難しく、中長期的な改革として、イノベーション評価(ミクロ的アプローチ)と財政中立的な薬剤費成長メカニズムの導入(マクロ的アプローチ)を並行して実施することも提案する。