メッセージ

新時代戦略研究所(INES)は、自民党衆議院議員だった近藤鉄雄氏が、政界引退後の1997年に株式会社として設立しました。近藤氏は大蔵省出身で、国会議員として活動中は労働大臣や経済企画庁長官を歴任しました。
経済、金融、政治、外交等の分野において、国際国内の緊急の問題についてその本質に迫る解明を試み政策提言するべく、民間の立場として研究を行い、朝食会の開催を中心に勉強の機会を設けてきました。
2018年7月からは、新時代戦略研究所は一般社団法人として活動してまいります。これからも多くの皆様が集まる場を提供し、21世紀の日本が直面する課題について議論を深めることを目的に活動します。

創業者のメッセージ

 20世紀最後の10年を人はこれを失われた10年という。たしかに戦後から一貫して成長をつづけてきた日本にとって、この10年間のマクロ・レベルでの停滞は大きなショックであった。しかし、私たちはその表面的な停滞の中で、敗戦直後にも似た強烈な崩壊と初々しい再生の混在を経験しているのである。事実、バブル崩壊後の金融経済のかってない迷走から国民は巨大組織、それがビジネスであれ官僚であれ政治であれ、そのすべてに対して、これまでの信頼を大きく失いつつある。危機的事態を招いたことで体制(エスタブリッシメント)に対する国民の信用は激しく揺らぎつつある。そして、それに代って民間に自由に開かれたマーケットでは数多くの意識的なベンチャーたちが、それぞれ多彩な可能性を秘めながら一斉に活動しはじめている。

 今や新しい21世紀を担うであろう膨大な数の多様な生命体が生まれ落ち、育ちつつある。それらは次代への測り知れないポテンシャリィティを内にもつ。それはビッグバンによって宇宙が誕生し、そこから無数の極微小因子たちがそれぞれ急激な膨張と凝縮の過程に入った状況に似ていると言えるかもしれない。問題は、いま創造されつつある21世紀という宇宙がどういう基本原理で形づくられるのだろうか、ということである。それはあきらかに20世紀を形づくってきた原理とは異なった、新しいシステム形成の基本によるものであろう。

 例えば経済成長という概念である。この10年、たしかに消費は低迷しつづけてきた。しかし、それでは消費は増えさえすればいいのだろうか。21世紀にどこまで消費が拡大し続ければいいのか。20世紀後半、とりわけ最終の4分の1世紀は、大量生産そして大量消費の時代であった。その基軸には急速な科学技術の進歩による生産性の飛躍的な向上があった。だが、それに伴って膨大な量の資源とエネルギーの消費があった。このような急激な資源とエネルギーの消費が、21世紀においてさらに加速的に進むとしたら、地球上の資源とエネルギーはこれに応えることが出来るのであろうか。

 消費がやたらに伸びないということは、21世紀を展望した場合むしろ望ましいことかも知れない。一人ひとりの人間が不必要な物的消費をしないで、それなりに快適に生活することこそが、21世紀に生きる人間の生活原理であるとも言える。生活の質的向上と内容の充実を極める中で、資源やエネルギーの浪費をいかに抑制するかということを、私たちは真剣に学ばなければならないのではないだろうか。この10年来の消費の低迷はそのための必要な学習期間と考えてはいけないだろうか。

 日本は少子高齢化時代に入ったと心配する声が多い。子供の数が増えなければ消費需要は伸びない。若々しい労働力の新たな供給もない。だから経済は活性化しない。成長も期待できないという。たしかに日本の人口は21世紀の初めに1億2000万を超え、それをピークに下り始め、21世紀末には6000万人になるといわれる。人口が100年間に半減するのであれば、これは一面では深刻な問題ではある。しかしながら経済成長を継続するために日本は人口を増やしつづけなければならないとしたら、それでは一体いつまでそれを続けていけばいいのか。そんなことは本当に可能であろうか。

 日本だけの問題ではない。この地球上果たして何百億の人が快適に住むことが出来るのであろうか。急速な科学技術の進歩発展にしても、それには資源的に環境的におのずから限度がある。人口の増加を経済成長のために絶対に必要な条件とするという理論は、21世紀にはもう適用出来ない古い考えである。それはこれから何百年何千年、あるいはそれ以上にわたる地球上の人類の生存を考えると、きわめて危険な思想である。私たちは人口が増えなくても安定した経済循環が可能になるシステムの構成を、これからはどうしても考えていかなければならないのである。

 第2次世界大戦が終わって半世紀余、今はじまった21世紀は日本にとっても世界にとっても、全く新しい発想の枠組みを必要としているのである。新しい時代が私たちにとって豊かで安心できるものに創りあげていくためには、これまでの前提や思考の型に全くとらわれない斬新な戦略を真剣に考え、大胆に実行していかなければならないのである。私たちの新時代戦略研究所はこのような高い志を持った気鋭の人材を集めて創立された。これまでも国際国内の緊急の問題についてその本質に迫る解明を試み政策提言をしてきたのである。私たちと志を分ち合うさらに大勢の方々のご協力ご参加をお願いしたいと思います。

新時代戦略研究所 (INES) 前代表取締役
近藤 鉄雄

近藤鉄雄 (こんどう・てつお)

経歴
1929年8月11日 山形県南陽市(旧漆山村羽付)に生まれる。

学歴

1945年海軍兵学校、1946年 高等商船学校入校。
1953年一橋大学経済学部卒業(理論経済学)
1954年フルブライト留学生としてカリフォルニア大学バークレー校に留学(経済政策)
1961年ハーバード大学国際ゼミナール(国際政治)に参加

職歴

1953年大蔵省入省。その後経済企画庁経済研究所研究員、国際通貨基金(IMF)日本代表理事補、ウイルソン・センター客員研究員(米国の金融制度と金融政策)労働大臣秘書官。
1972年衆議院議員に当選。以来9回連続当選。行政管理、文部、農林水産の各政務次官、衆議院科学技術常任委員長、国際民主同盟(IDU)日本代表幹事、自民党国際局長、通信部会長、金融問題調査会長を歴任。
1986年国務大臣経済企画庁長官(中曽根内閣)。
1987年ドイツ連邦共和国功労勲章大功労十字星章付大章を受賞。
1991年労働大臣(宮沢内閣)。
1997年新時代戦略研究所(INES)を設立、代表取締役に就任。
2000年勲一等旭日大綬章を叙勲。
2010年3月4日逝去
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