「革新的な再生医療等製品の持続可能なエコシステムの確立」を
実現するための2026年度 薬価制度改革に向けた提言を発表
社会保障を中心とした様々な分野での政策立案に向けた研究や提言を行う、一般社団法人 新時代戦略研究所 (INES)は、株式会社日本総合研究所と共に、「革新的な再生医療等製品の持続可能なエコシステムの確立」を実現するための2026年度 薬価制度改革に向けた提言(価格制度・診療報酬制度における重要事項)」を取りまとめました。本提言には、医療従事者やアカデミアなど様々なステークホルダーの方が賛同しています。
【2025年10月1日 革新的な再生医療等製品の持続可能なエコシステムの確立」を実現するための2026年度 薬価制度改革に向けた提言(価格制度・診療報酬制度における重要事項 )】
再生医療等製品を含む新規モダリティの開発は世界において年々増加傾向にあり、既存のモダリティでは治療困難であった疾患に対しても、非常に高い臨床効果をもって治療を可能とする製品および製品候補が登場しています。
一方で、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスの発生は、日本の患者への治療選択肢を狭めるだけではなく、経済、国力の低下にも影響を及ぼしかねません。とりわけ再生医療等製品においては、欧米で承認済みの製品の約69%は日本での開発が進んでおらず、また臨床試験(P3)・申請中の製品候補のうち約84%が日本で臨床試験が実施されていないという深刻な状況1であり、再生医療等製品をはじめとした新規モダリティの日本における開発・導入を阻害する要因として、診療報酬制度、特に価格制度2の課題が挙げられると考えます。
日本政府はドラッグ・ラグや、ドラッグ・ロスの解消およびわが国の医薬品産業の国際競争力の強化に向けて取り組んでいます。「創薬力向上構想会議」の3中間とりまとめ、および政策目標と工程表では、2026年度薬価制度改革の中で革新的新薬の薬価の在り方について議論を行う旨が明記されています。2025年6月に設置された「創薬力向上官民協議会4」および「同会ワーキンググループ5」では、投資とイノベーションの循環が持続する社会システムの構築も重要なテーマとして設定し、検討が始まっています。さらに、2024年度の薬価制度改革においては、“再生医療等製品を含む新規モダリティの評価について、次期改定に向け検討”と、とりまとめられている6ことから、2026年度薬価制度改革において再生医療等製品の価格制度がどう改革されるかは非常に重要な論点です。
以上のような状況を踏まえて、再生医療等製品の持続可能なエコシステムを確立していくために早急に対応すべき重点事項を提言します。
再生医療等製品に関する2026年度の価格制度・診療報酬制度における重要事項
- 再生医療等製品の特徴を評価するための有用性加算の新設
- 再生医療等製品にかかる補正加算の傾斜配分ルールの見直し
- 再生医療等製品にかかる市場拡大再算定の適用見直し
- 医療現場におけるコストを適切に反映する診療報酬制度への改善
バイオテクノロジー関連技術の高度化が著しい現代において、革新的新薬の研究開発が適切に実施され、日本市場に遅延なく導入され、国民や患者がその恩恵を受けていくためには、日本政府が、イノベーションへの投資が報われ、次のイノベーションに投資できるような持続可能な診療報酬制度および価格制度であることを産業界に対し示していくことも必要です。従来の医薬品や医療機器に関する診療報酬制度の延長線上で設計されてきた価格制度を今一度見直し、革新的な新規モダリティとしての特徴を踏まえた評価へと刷新するべきと考えます。医薬品産業を重要な成長産業・基幹産業と示している国の方針7に基づき、2026年度の薬価制度改革において、適切な変革が行われることを期待します。詳細は別添の提言の全文をご覧ください。
新時代戦略研究所は、今後も特定の利害関係にとらわれることなく、あらゆるステークホルダーの皆様と協力しながら、日本の創薬・医療におけるイノベーション推進に向けて、活動してまいります。
参考資料:株式会社日本総合研究所 「革新的な再生医療等製品の持続可能なエコシステムの確立」に向けた提言」(2025年7月)
https://www.jri.co.jp/column/opinion/detail/15970/
1厚生労働省 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第236回) 意⾒陳述資料 再⽣医療イノベーションフォーラム 「再⽣医療等製品の価格算定に対する意⾒」(2025年7月)
(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001514787.pdf)
2本提言では、薬価や特定保険医療材料といった既存の制度とは別に、再生医療等製品の特性に合致した診療報酬上の評価制度を構築すべきという考えに立ち「価格制度」という考え方を示すものである。
3内閣官房創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議
4内閣府 創薬力向上のための官民協議会
5厚生労働省 創薬力向上のための官民協議会ワーキンググループ
6厚生労働省「令和6年度薬価制度改革について」 令和6年度薬価制度改革における主な改革事項(2024年3月)
(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238906.pdf)
7内閣官房内閣広報室 総理の一日 「創薬力向上のための官民協議会」(2025年6月)
(https://www.kantei.go.jp/jp/103/actions/202506/26souyakuryoku.html)
本提言の趣旨にご賛同いただいた方々(敬称略、五十音順、2025年10月1日時点)
天野 慎介 | 一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長 |
五十嵐 中 | 東京大学大学院薬学系研究科医療政策・公衆衛生学 特任准教授 |
石田 禎夫 | 日本赤十字社医療センター 骨髄腫アミロイドーシスセンター長 |
翁 百合 | 株式会社日本総合研究所 シニアフェロー |
小黒 一正 | 法政大学 経済学部 経済学科 教授 |
桜井 なおみ | 一般社団法人CSRプロジェクト 代表理事 |
鈴木 憲史 | 日本赤十字社医療センター 骨髄腫アミロイドーシスセンター顧問 |
豊嶋 崇徳 | 北海道大学大学院 医学研究院 内科学分野血液内科 教授 |
土居 丈朗 | 慶應義塾大学経済学部教授 |
八代 嘉美 | 藤田医科大学 橋渡し研究支援人材統合教育・育成センター 教授 |
- 新時代戦略研究所(INES)
新時代戦略研究所(INES)は、自民党衆議院議員だった近藤鉄雄が、政界引退後の1997年に株式会社として設立しました。近藤は大蔵省出身で、国会議員として活動中は労働大臣や経済企画庁長官を歴任しました。経済、金融、政治、外交等の分野において、国際国内の緊急の問題についてその本質に迫る解明を試み政策提言するべく、民間の立場として研究を行い、朝食会の開催を中心に勉強の機会を設けてきました。2018年7月より、一般社団法人として活動しています。これからも多くの皆様が集まる場を提供し、21世紀の日本が直面する課題について議論を深めることを目的に活動しています。
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